中東のベクトル 2020 8 15

 日本においても、
イスラエルとアラブ首長国連邦が国交正常化に合意したというニュースが、
大きなニュースとなっていて、新聞の第1面に掲載されています。
 これは、アメリカ外交の大きな成果であるとともに、
アラブ諸国にとっては、イラン包囲網の形成の動きと解説されます。
また、これは、イスラエル外交の成果でもあるでしょう。
 このような動きは、日本人にとっては、わかりにくいでしょう。
年配の人にとっては、「アラブ統一」という大義は消えたのだろうと思うかもしれません。
 かつては、「反イスラエル」というイスラエル包囲網とともに、
この地域には、アラブ統一という夢があったのです。
 そういうわけで、「反イスラエル」というベクトルを
「反イラン」というベクトルに変えたという意味では、
イスラエル外交の大きな成果と言えるでしょう。
 このようなベクトルの変化は、
イスラム教シーア派の拡大に警戒心があるかもしれません。
 シーア派の勢力は、イランからイラクへ拡大して、
最近では、地中海に面するレバノンまで伸長しています。
 さらに、インド洋に面するイエメンの内戦では、
シーア派とスンニ派の代理戦争とも言われています。
 ここ10年のニュースでは、
シーア派の優勢を伝えるニュースが多かったかもしれません。
 多くの日本人は、まるで他人事のように思っているかもしれませんが、
実は、将来的には、日本にも大いに影響があると言えるでしょう。
 日本が必要とする原油の輸入の9割近くは、中東からです。
輸入先で一番多いのは、サウジアラビア、次はアラブ首長国連邦です。
 中国も中東から原油を輸入していますので、危機感を持っています。
最近の中国は、陸地の拡大だけでなく、「島」にも関心があるかもしれません。

2020年7月12日に、国際政治学者の六辻彰二氏は、こう書いています。

中国が中東に基地を構える日 中国は「第二のアメリカ」になるのか

 中国は、中東イランのキーシュ島を25年間租借する権利を得て、
ここに軍事基地を構えようとしていると報じられている。
 これが事実なら、中国は、
アジア、中東、アフリカを結ぶ海上ルートを確立しつつあるといえる。
 ただし、イランに軍事基地を構えた場合、
中国自身も大きなリスクを背負うことになる。
(引用、以上)
 キーシュ島というのは、ペルシャ湾に浮かぶ小さな島ですが、
非常に価値があります。
 島というと、普通は、山が海に迫り、土地の利用価値が低いですが、
キーシュ島は、なんと島全体が平らです。
だから、島の中央部には、国際空港があります。
 囲碁の布石としては、絶妙な一手ですが、
中東の場合は、単純に、そうならない場合があります。
 著者が指摘するように、
「外国軍隊の駐留は、どこでも摩擦を生みやすいが、
イスラーム圏では、とりわけ『異教徒の軍隊』への拒絶反応が強い。
 国際テロ組織アルカイダを率いたオサマ・ビン・ラディンが、
アメリカを断罪した一つの理由は、湾岸戦争(1991)で、
イラク軍を攻撃する拠点として、
サウジアラビアに米軍が基地を構えたことにあった」
(引用、以上)





















































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